「北海道の江別市に独創的な絵本の作家がいるんだって!?」
こんな疑問にお答えします。
手島圭三郎の絵本は木彫りから創る達人、江別の故郷がその絵本の物語の生命の地
北海道の命の息吹を掘る 絵本作家 手島圭三郎
北海道江別市在住の木版画家・絵本作家「手島圭三郎(てじま けいざぶろう Tejima Keizaburo)」さん(85)。
躍動感のある動物をモチーフにした絵本が世界的に人気の作家さんです。
その手島圭三郎さんは今年、40作品目を期に創作活動に幕を下ろすことを決めたとのことです。
この記事では、2021年10月31日に放送されたNHK日曜美術館『北の息吹を刻む〜絵本作家・手島圭三郎 最終作へ〜』についてと、手島圭三郎さんの経歴、最終作となった絵本などの作品紹介をまとめています。
この記事を読むとわかること
1)手島圭三郎さん(北海道・江別市)の木彫り絵本の魅力がわかります。
2)自分にあった絵本に出会える、探せる!
手島圭三郎(絵本作家)プロフィールと経歴
北海道江別市在住の木版画家・絵本作家 手島圭三郎(てじま けいざぶろう Tejima Keizaburo)さんは、1935年[昭和10年]生まれ(86歳)、北海道に生まれる。日本版画協会会員。
出身地は北海道紋別市です。父が鉄道員で転勤が多く、主にオホーツク海沿いの農漁村を点々として育ったそうです。
子供の頃(幼稚園)家の中ですっと絵を描いていたいそんな子供でした。学校に行って友達と遊んでいるのは仮の姿だと、家に帰って絵の続きを描いているのが本当の姿だと思っていました。
将来は画家になる北の大地が手島少年の心を突き動かしていました。
1957年(昭和32年)北海道学芸大学(現・北海道教育大学)札幌校卒業後、20年に渡り中学校の美術教師を務め、そのかたわら画家を目指し個展を開いていました。24歳の時に木版画と出会いました。子供の頃から親しんだ北海道の自然を描いてきました。原始的な自然 北海道的なものを表現するために木版画が持っている素朴さ、強く訴える強さ、ぴったり合っていました。
北海道をテーマに描くほうが自分の生き方に一番合っていると思いそれに賭けようと思いました。
そして木版画家として独立。
47歳、1982年(昭和56年)に日本版画家協会展に出展したシマフクロウの版画が福武書店の編集者の目に止まり、絵本作家としてデビュー,同作品で絵本日本賞を受賞。
その後、精力的に創作活動を続け「きたきつねのゆめ」でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞、「カムイチカプ」で厚生省児童福祉文化奨励賞受賞。
また、「きたきつねのゆね」「おおはくちょうのそら」は、1987年、1988年ニューヨークタイムズ紙選「世界の絵本ベストテン」に選出される。
手島圭三郎の絵本の特徴
北海道の大自然とそこに生きる野生動物を木版画で描いてきました。
木版画ならではの力強い線と鮮明な色彩、人と変わらぬ出会いと別れのドラマ・・
深く心に訴える幻想的な物語
本物の動物が本物の自然の中で生活している、そういう姿の中に生きる喜びが隠れています。
作家生活40年、多くの絵本を世に送り出し、リアリズムと幻想性を融合させたより高い芸術性が世界的に評価されています。
手島さんの作品は、シマフクロウ、キタキツネ、ヒグマなど北海道の動物を題材としている点が大きな特徴です。
作品はアメリカ、ドイツ、スイス、デンマーク、スウェーデン、中国、韓国でも翻訳されており、世界的な人気を博しています。
主な受賞歴は以下のとおりです。
- 1982年作(昭和57年)デビュー作の『しまふくろうのみずうみ』で「絵本にっぽん賞」を受賞。
- 1984年作(昭和59年)『カムイチカプ』厚生省児童福祉文化奨励賞
- 1985年作 (昭和60年)『きたきつねのゆめ』ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞
- 1983年作(昭和62年)『おおはくちょうのそら』ニューヨークタイムス選・世界の絵本ベストテン入
- 1988年作(昭和63年)『きたきつねのゆめ』ニューヨークタイムス選・世界の絵本ベストテン入
- 1997年作(平成9年)『おおはくちょうのそら』ドイツ児童文学賞 絵本部門・ノミネート賞
- 2017年(平成29年)北海道功労賞
ここ数年自らの衰えを感じた手島さんは引退を決意しました。最終作となる40作目に挑みました。自分との戦い、モノを作る人間の宿命と感じていました。ひと掘りひと掘り北の息吹を力強く刻みたいと挑戦してきました。
手島圭三郎絵本作品リスト
年 | 作品名 | シリーズ |
|
---|---|---|---|
1982 | しまふくろうのみずうみ | 北の森から | |
1983 | おおはくちょうのそら | 北の森から | |
1984 | くまげらのもり | 北の森から | |
カムイチカプ | カムイ・ユーカラ | ||
1985 | きたきつねのゆめ | 北の森から | |
ケマコシネカムイ | カムイ・ユーカラ | ||
1986 | ひぐまのあき | 北の森から | |
チピヤクカムイ | カムイ・ユーカラ | ||
1987 | ふゆのうま | 幻想 | |
1988 | イソポカムイ | カムイ・ユーカラ | |
1989 | ふぶきのとり | 幻想 | |
1990 | エタシペカムイ | カムイ・ユーカラ | |
1991 | はるのちょう | 幻想 | |
1993 | しまふくろうとふゆのつき | いきるよろこび | |
1995 | はまなすのおかのきたきつね | 大自然のいのちの物語 | |
1998 | たんちょうづるのそら | 極寒に生きる生きものたち | |
1999 | おじろわしのうみ | 極寒に生きる生きものたち | |
くまげらのはる | 極寒に生きる生きものたち | ||
2000 | しろふくろうのやま | 極寒に生きる生きものたち | |
2001 | えぞふくろうのみみ | 極寒に生きる生きものたち | |
2002 | はいたかのふゆ | 極寒に生きる生きものたち | |
えぞりすのあさ | 北に生きるかしこい動物たち | ||
2003 | ゆきうさぎのちえ | 北に生きるかしこい動物たち | |
2004 | えぞしかのたび | 北に生きるかしこい動物たち | |
えぞももんがのよる | 北に生きるかしこい動物たち | ||
2005 | あざらしのはる | 北に生きるかしこい動物たち | |
2006 | らっこのうみ | 北に生きるかしこい動物たち | |
2008 | みずならのいのち | ||
2010 | しまふくろう いきる | いきるよろこび | |
2011 | きたきつねのしあわせ | いきるよろこび | |
2012 | とびだせ にひきのこぐま | いきるよろこび | |
2013 | はるをはしるえぞしか | いきるよろこび | |
2014 | かしこくいきる しまりす | いきるよろこび | |
2015 | つきよのくろてん | いきるよろこび | |
2016 | えぞふくろう ふぶきをのりこえる | いきるよろこび | |
2017 | きたきつねとしろふくろう たすけあう | いきるよろこび | |
2018 | はしれ はるのゆきうさぎ | いきるよろこび | |
2019 | くまげらのはる | いきるよろこび | |
2019 | あざらしのはる | いきるよろこび | |
2019 | たんちょうづるのそら | いきるよろこび | |
2019 | すだつ きたのかわせみ | いきるよろこび | |
2020 | ひとりだちする きたきつねのこども | いきるよろこび | |
2021 | きたきつねとはるのいのち | いきるよろこび |
手島圭三郎「きたきつねとはるのいのち」製作のエピソード
2020年3月下旬より創作を開始しました。創作の源とした場所に向かいます。野幌森林公園です。
札幌市に隣接し、広大な森が広がる公園です。この公園のそばに住まいをかまえる手島さんは四季おりおり40年に渡り、足を運んできました。
空の色とか白い雲が湧いていますこれは春の雲、空や雲だけでも春の気配というかエネルギー見たいな物を感じます。自然を見つめスケッチすることが、インスピレーションの源です。
手島さんは小さなA5サイズぐらいのスケッチで周りの風景を描いていきます。リアルな生態を求めて想像の翼を羽ばたかせます。
まだ雪が残り地面には、動物の足跡がの残っています。この足跡にもドラマがあります。恋愛活動をする動物も多い、ロマンスの足跡もあれば、生きるための生死をかけたドラマもあります。
そういう色々な足跡を見て空想させるような舞台、発想のイメージを湧かせてくれたりする種は尽きることはありません。
一年に1作 この40作目を集大成として引退します。手島さんは語ります。
「だんだん年をとると動きが鈍くなる、だけど今までやってきたのは、やっぱり面白いから、楽しいからやる 好きだからやる それが根底にある」
創作開始です。
まずは、下絵を描きながら構想を練ります。鉛筆で描き、墨やクレヨンで色付けをしていきます。
下絵を壁に貼り 伝えたい思いを練るあげます。
構想は、キツネを主人公にして自分の巣から出て歩きまわって、そこでいろいろな春がきているという観察をする、”春の目撃者”、タイトルには「きたきつねとはるのいのち」。やはり春は自然の中で動物も植物も人間も含めて活気づく、新しい命、人生が限りなく美しく そして幸せ「生きる喜び」を表現しています。
これをどう読者へ伝えるか? 新たにシーンを付け加えながら創作していきます。それは動物の死骸のシーン。これは架空の話ではないため、現実にある動物の生態、本能とは習性だとかその範囲でのドラマ。毎年毎年、足りない知恵を絞りながら絵を変えていきました。
貼り替えても何回も貼り直しをしながら練り上げていきます。春のいのちのテーマを掘り下げていきます。
自然の中で観察して描いた動物や植物、その数3000枚以上にもおよびます。鍛え上げた描写力が絵本にリアルな手応えを生むのです。
また最終作に挑むため手島さんは原風景を確認するため、60年ぶりに故郷のオホーツクに向かいました。手島さんは絵の中で北海道だから エゾマツをよく描きます。枝が下に下がった木です。
手島さんの原風景 オホーツク海の流水
手島さんは少年時代 この海でたくさんの動物と出会いました。冬を越すためにオジロワシやオオワシが氷に乗ってやってきます。一緒にやってくるゴマフアアザラシとクラカケアザラシ。原風景をスケッチしていきます。
2020年7月 創作を開始して3ヶ月、ストーリーの練り直しや絵の書き直しを重ね19枚の下絵が完成しました。
いよいよ木版画の彫りの作業に取り掛かります。ベニア板を原画サイズに切ります。下絵を裏返して光に透かし逆になった絵を板に写していきます。墨で線を描き 彫る部分を決めていきます。板木全体に薄墨を刷く。薄墨は彫った跡がはっきり分かります。
彫刻刀での彫り作業、木版画は掘ると修正がきかないため、緊張して掘ります。緊張感がなければ緊張感のある作品は作れません。
輪郭は一気に掘ります。集中が切れれば線は死んでしまいます。掘ることによってキツネや他の動物、植物などに生命が吹き込まれます。生命の持った生き物が動き出します。
手島さんの入念な彫り作業は3ヶ月におよびます。短期間で掘ってしまえば作者の魂が込められる量が少ないと語っています。悩めば悩むほど出来上がった作品には作者の魂が込められています。
1枚の絵を4枚の版木に彫り、1色ずつ色をのせて絵を仕上げます。色は水彩の絵の具を使います。多くの色を使わず版画ならではの鮮やかな色彩対比を目指します。
摺ったときに色が滲みやすい上質な和紙を使用します。体重を腕と手にかけ色むらが出ないように素早く摺ります。最後に絵の基調となる黒墨を使います。
一枚の絵に4色の色版、計70枚の板木を摺利上げます。表紙や題名・文章などの作業をします。
40年間の集大成、完成した作品がこれになります。⬇️⬇️⬇️⬇️⬇️
3月になっても深い雪に覆われている北海道で、きたきつねは、生まれた子供のために餌を探しに行きます。
北海道の大自然には、たくさんの動物が生息していますが、冬は動物にとって厳しい季節です。親から離れた子供が、餌をとれなかったり、年老いた動物が死ぬのは、冬が多いのです。
やがて厳しい冬が終わると、暖かい春の日差しに包まれて、きたきつねは生きる幸せを感じます。引用:amazon
まとめ
子供の頃は何回も繰り返して読んだ絵本。大人になるにつれて触れる機会が減り、お気に入りの絵本があったことすら忘れてしまっている人は多いと思います。しかし絵本は子どもだけのものではありません。本当に素晴らしいものは、年代に関係なく素晴らしいと思うものです。
あなたの生活を彩り心を軽くする一冊が、どうか見つかりますように!
少しでも参考になれば嬉しいです。最後までお読みいただきありがとうございます。
関連記事
おばあちゃんは75歳から絵を描き始めた、グランマモーゼスはアメリカの国民的画家
コメント