「ゲド戦記」を見た多くの人が「ストーリーが分かりにくい」と
言いますが、分かりにくいという評価の一因は、こうして原作の多くの部分が割愛されている・・・
ゲド戦記っていうアニメはどうなの?
そんな疑問にお答えします。
数多くの名作アニメを世に送り出し、数々の受賞歴を持つ、
宮崎駿(みやざき はやお)さん。
30年前にアニメ化を熱望するも、原作者の許可が降りずに断念した作品
2006年、息子の宮崎吾朗さんがアニメ化しました。
そこで今回の記事は、その「ゲド戦記」のアニメ化の経緯についてご紹介します。
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ゲド戦記 宮崎駿の息子の初映画監督作品
魔法使いの住む世界。世界を住み分けたはずの竜が人間の世界へ現れたり、
魔法使いが力を失ってしまったりと、何者かによって世界の均衡が失われ始めていた。
エンラッド王国の王子、アレンは国の平和を脅かす者への
対策を考えるあまり、精神を病んでいた。
そのためか、自分の体から影が抜け出してしまい、
衝動的に国王である父を刺してしまうのだった。
国を逃げ出すアレン。途中で動物に襲われてしまうが、
世界の異変の原因を探るべく旅をする男ハイタカに遭遇する。
ハイタカに救われ、行動を共にすることにしたアレンは、
かつては美しい街だったが今では腐敗が進む街ホート・タウンを訪れる。
そこで、奴隷として売られそうになる少女テルーと出会う。
こうした出会いが、世界の均衡を秘密につながる戦いへと発展していくのだった。
「ゲド戦記」を約30年前以上のアニメ化を熱望
1968年、アメリカで「ゲド戦記」というファンタジー小説が
発表されているのですが、その数年後日本で翻訳版が出版されると、
当時、宮崎さんは、これに惹かれました。
1980年代前半、宮崎さんとプロデューサーの鈴木敏夫さんは、
「ゲド戦記」の映像化を企画したそうですが、
原作者のアーシュラ・クローバー・ル・グウィンさんの許可が降りず、実現しなかったそうです。
(この「ゲド戦記」は、「ナルニア国物語」「指輪物語」と合わせて
3大ファンタジーと呼ばれるようになり、当時、様々な人達が映像化しようとしており、
宮崎さんもそのうちの一人だったそうです)
「ゲド戦記」約30年後にアニメ化を!
しかし、30年の月日を経た2003年、日本語版を翻訳した清水真砂子さんを通して、
宮崎さんの作品を観たル・グウィンさんが、宮崎さんに映画化してほしいと言っている、
との話が舞い込んできたそうで、
(というのも、ル・グウィンさんは、当初、宮崎作品はおろか、日本のアニメすら見たことがなかったことから、アニメ化の話を断られたそうですが、その後、「となりのトトロ」を見て、「ゲド戦記」を映像化するなら、宮崎さんに任せたいと思うようになったのだそうです)
長男の宮崎吾朗を監督に
宮崎さんはというと、当時、「ハウルの動く城」(2004年)の制作で頭がいっぱいだったうえ、自分が作りたいと思っていた頃から随分時間が経っていたことから、
今の自分にできるだろうか
と、悩まれたそうです。
そこで、鈴木さんは、宮崎さんの長男・宮崎吾朗さんを監督に推薦し、
吾郎さんがル・グウィンさんに映像化の許諾をもらいに行くことになったのですが・・・
それを知った宮崎さんは、今度は、
監督は時間があるなら一枚でも多く絵を描くべきで、
原作者へ許諾をもらいに行くのはプロデューサーの仕事だろう
と、言ったそうで、
鈴木さんは、ふと思いついて、
じゃあ宮さんと僕で行きましょう
と、提案。
すると、宮崎さんは、「えぇっ?」と動揺されたそうですが、
鈴木さんは、「ファンなんだからいいでしょう」と説き伏せられたのだそうです(笑)
「ゲド戦記」のポスター画について熱弁
- ポスターになっている吾朗さんが描いた竜と主人公・アレンが向き合った絵
- もう一つは宮崎さんが描いた第3巻のホートタウンの町の絵
の、2枚の絵についての話になったそうですが、
宮崎さんは、突然、吾朗さんの描いた絵を指して、
これは間違っていますよね
と、言い出すと、
次に自分の絵を指して、
これが正しいと思います
と、言い、
このポスターのように、竜とアレンが目を合わせているのはおかしいじゃないですか。そうでしょう、ル・グウィンさん
と、吾朗さんの描く絵がなぜ間違っているのかという説明をし始めたそうで、一体、何をしに行ったのか分からない状態になってしまったそうです(笑)
それでも、なんとかその場はやり過ごして、ル・グウィンさんと別れ、その夜の食事会で再び合流すると、最初は、この仕事とは関係ない話をしていたそうですが、やがて、テオさんに促されたル・グウィンさんが、しばらく沈黙した後、ル・グウィンさんの前に座っていた宮崎さんの手を取り、
吾朗さんにすべてを預けます
と、おっしゃったそうで、それを聞いた宮崎さんは、「うぅ…」と涙を流し、無事、長男の吾朗さんにより、「ゲド戦記」の映画化を実現することができたのだそうです。
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